見張り塔跡地とその周辺を眼下に見おろし、旋回しながら手短に被害状況を確認する。付近にバトルの喧騒は聞こえず、自分たちが通過してきた空路以外の方向に捜索の検討をつける。

未だ黒煙を上げる塔は、突撃を受けた鳥影のままに屋上と直下の部屋が斜めに分断されて崩落し、塔屋部分が地面に泣き別れしていた。

ひこうタイプの最高ランクの一つであるブレイブバードの威力に対して、ナックルのように補強も補修もなされていない、遺棄されて長い塔の耐久はとっくに潰えていた。無残な断面を晒す石壁をドラメシヤ達がすり抜けながら、慌てた様子で雨ざらしの室内と行き来しているのが上空からも見てとれる。

金枠ごと外れた大窓の硝子片が広範囲に散乱して、雨粒を一心に受けながら曇天を映している。所々に見られる赤い血痕は、おそらく避けきれなかった地上のトレーナーのものだろう。被害規模の割に死傷者が出なかったのが幸いだった。

地上にいるエンジンジムトレーナーの着陸要請サインに応え、騎乗体勢は解かないままに低空まで高度を下げる。


「リョウタにはドラメシヤ達の保護を頼みたい。捕獲にあたりボールの使用を許可する。全24個体だ、…いけるか。同エリア内にも散開している可能性があるが、帰巣能力は野生より強い。塔付近に待機していればいずれ戻る」

「了解しました。キバナ様は、」

「オレは件のトレーナーとを追跡する。既にバトルに入っており、転回が激しくエンジンシティに接近しているとの通報が入っている。街に被害が出る前に両者の保護もしくは沈静化させるつもりだ。エンジンジム、そちらの状況はどうだ」

「重傷者は搬送完了したので、軽症者の処置とまもなく塔の検分に入ります。まだ内部で火種が残っている箇所もあるため、消化活動も同時に。…こちらの遺跡は文化財相当と伺っています。ナックルジムリーダーに保護対象物のご指示を頂くようにカブさ、エンジンジムリーダーから言われていますが…、お時間頂くことはできますか」

「キバナ様、ここは自分が対応します。ドラメシヤの捕獲含めて、待機時間中に対応できるかと」

「…そうだな、リョウタ、お前の眼なら安心できる。ナックル遺物保護条例に則り第一、第二級物品に該当するもの、並びに書籍等の記録媒体を回収対象とせよ。あとは、…小さな蝋燭ランプと、ひとかかえほどの大籠があるはずだ。もし見つけたらでいい、保護してくれ。いいか、あくまで人命及びポケモン優先だからな、くれぐれもお前や他が傷ついてくれるなよ。火消しと重量物の移送要員にヌメルゴンとギガイアスを置いていくから、指示は頼む」

「分かりました、ありがとうございます。キバナ様もご無事で。ペリッパー、フライゴンの進行方向、前方に向けておいかぜ!」

「ありがたい!塔の追加倒壊に全員警戒を怠るなよ!」


援護の旋風に後押しされて、勢いづいた速さのままに上空に出戻る。

往路の方角から迂回してエンジンシティに近づいていけば、城門にほど近い中空で激しく動き回る二つの影を視認する。ドラパルトとアーマーガアが、地上ではないフィールドで出せる技が限られているのか、唸りをあげて体当たりに近い勢いで衝突し合っている。二匹に横入りする形で滑空し、攻撃が当たらない程度の上空から牽制代わりにドラゴンクローを放てば、ポケモンに続いて騎乗主がこちらの存在に気づいて一旦攻防の手が止まる。

ドラパルトの背に騎乗というよりはしがみついている格好のは、バトルの心構えもなく急襲された体に見えた。ポケモンライド自体は慣れているせいか容易に落下はしなさそうだが、指示が出せているとは到底思えない。対するオレよりだいぶ年長そうな相手のトレーナーのバトル慣れした風貌は、SNS投稿で予感した通り、ジムで見た資料写真と相違なさそうだった。


「こちらナックルジムリーダー、キバナ!シティ周辺空域は野良バトルは禁止されている!即刻バトル停止し、地上へ帰還せよ!」

「ナックルのジムリーダー!?なんでそんな奴まで…!…っこいつが、ドラパルトのトレーナーが襲ってくるんです!こっちは攻撃の意思なんてないのに!」

「…ならオレが代わりの標的になる。エンジンの街中に避難し、向こうのジムリーダーに従え」

「でも…!」


でも、なんだ。ドラメシヤは俺のものだ、か?自分の取り分を迂闊に申告できないのだろう、苛立った態度を隠しもせずに、行動は起こさぬままオレを説得しようと口を開いては閉じ、考えあぐねているのが見て取れる。直近の状況だけ見ればドラパルトがやや優勢気味にアーマーガアに攻撃を繰り返しているように見えたが、一過性の状況では判断がつかない。

あくまで事態終息の体で再度の避難勧告を告げようとした時、つんざくような轟音と共に稲妻がアーマーガアとトレーナーのすぐ近くに落下した。余韻の静電気が自分の鼻先から後頭部へ走り抜け、後ろ髪がバチバチと帯電する。断続的な空の点滅も相まって思わず姿勢を低くし目を細める。

かみなりの主に視線を向ければ、エレキを発しながら相手を凝視するドラパルト。平素は並みの野生ポケモンよりもよほど冷静なドラパルトが、目を見開いて興奮しきっている。こうまでなるのに何があったのか、過去の諍いだけなのか、それを上回る何かか。

地上戦であれば雨天必中の雷は幸い、空中戦であまり命中率は高くはないだろうが、雨に濡れた今の状態ではトレーナーごと一撃必殺ともなりかねない。騎乗主がいる状態で当てさせるわけにはいかない。

フライゴンに指示を出し、飛行する二つを巻き込みながらすなあらしを展開する。視界が砂塵によって瞬く間に不明瞭になり、続く点滅と轟音があらぬ方向から響いたことに一旦安堵する。フライゴン以外のポケモンには砂礫の破片が痛いだろうが、少しでもこれで他に気を取られればいい。


しばしの膠着状態を維持して、砂塵の渦が晴れた。エンジンシティはもう建物の屋根が見えるほどまでに迫っている。カブさんが市街地用の緊急放送マイクに指示を出しながら、外周回廊をウインディに乗ってこちらに駆けているのが見える。

不意に、瞼を砂に瞬かせて動きを止めたドラパルトに丸い投擲物が投げられた。それは当たらず地上に落下したが、背面のが初めて動きを見せ、ドラパルト自身を守るよう首に手を回した。まさかポケモンの技を自前で受けようなどと、不可能だと分かる程度には彼女もバトル知識がある筈なのに、何故。


「ドラパルトを庇うな!ポケモンは人より遥かに耐久力が上だ!万一深く傷を負っても治療が可能だ、君が彼女を庇う必要はない。人の身を知りなさい!」


拡声器に持ち替えたカブさんの厳しい言葉が響く。心優しい彼女にこういうことを言うのは気がひけるが、背に腹は変えられない。自分も似たような忠告を飛ばしながら近づこうとするが、ドラパルトが再び興奮状態を見せて尾を激しく振りながら動き回るため、高度を下げることができない。は依然として上半身を乗り出してしがみついたまま、いやいやと子供のように首を振っている。


「通じていないのか!?キバナ君、通訳を!」


間違いなく通じてる確信はあった。この程度なら、もう彼女は易々と理解できるはず。もしかして拒否ではなく、違う、と言いたいのだろうか。次の瞬間、ガツンと彼女の額に丸い影がぶつかったと同時にドラパルトが一瞬光に点滅する。


「、っ捕獲だ、トレーナーはドラパルトを捕獲しようとしている!」


トレーナーの方を向き直れば、同じく砂嵐に戸惑っているアーマーガアの背中からモンスターボールを複数手に構えているのが見える。もうなりふり構っていられないのか、ジムリーダーを気にしている素振りもない。ドラパルトが野生個体の状態になっていることは周知の事実で、だからトレーナーは再度彼女を捕獲することができる。それを防ぐ手段は誰にもない、それこそ物理的にボールを弾くくらいしか。

目くらましの砂嵐を再度放とうとしたところで、業を煮やしたドラパルトが鋭く鳴いて頭角を下げた、あの体勢はおそらくすてみタックル。を乗せたまま相手に衝突すれば、どちらの人間にも被害が及ぶことは必須。自分が上から両者の間に技をたたき込んで止めたとてダメージは免れない、マズい!

ドラパルトの下肢がたわみ、突撃する直前の予備動作に入る。


「フライゴン、…頼んだ」


腹をくくって手綱のベルトが繋がる首元を撫でれば、バトルの喧騒の中でも確かな相棒の返事。騎乗主とポケモンを結ぶ唯一の安全帯を外し、ボールボタンを押して空中にいながらフライゴンを引っ込める。虚空に投げ出された自分の体が、重力に従い自由落下の姿勢に向かう。

激高したドラパルトと空中で視線が合わさる。


はオレがもらい受ける!すりぬけろ、ドラパルト!!』


一筋の閃光となったドラパルトと墜落するオレが、瞬間交差する。

勢い付いたの質量を腹部に感じて、首にダメージがいかないよう咄嗟に体位を丸め込む。同時に指を当てたままのボタンを押して再びフライゴンを実体化させ、城壁すれすれのところでホバリングする。即座に振動した羽根が石肌を掠めて大きく態勢を崩したが、安全ベルトを再固定して立て直す。すぐさまの体を目視、本人の意識はないが、大きな怪我は確認できない。

背後でけたたましい音と共にドラパルトがアーマーガアと外周回廊に激突した。トレーナーも巻き込んだらしく、市街からの悲鳴が響く。

衝撃が砂礫と共に飛び散り、自身の上着でを覆いながらその場を離れて街中の公園に目星をつけ、着地する。すぐさま駆け付けたウィンディに装備されている救助帯に彼女の体を固定して安全な場所へと指示すれば、救護先をきちんと訓練されているのだろう、巨体はすぐさま踵を返して視界を遠のいていった。



軽く一息ついてから様子見に集まった人だかりに今一度避難を呼びかけ、土埃の舞う場所に戻る。昏倒したトレーナーとひんしのアーマーガア。どちらも怪我はしているが、命に関わるようなものはないように見えた。

その近くで動かない相手に尚も飛び掛かろうとするドラパルトをキュウコンが毛先の長い尾で柔らかく押しとどめ、カブさんが牽制している。激高に対比するように静かに宥める声音の隙間から、ドラパルトのしゃくりあげる鳴き声が周辺一体に響き渡る。


「君の怒りは大いに分かる、だがここはぼく達の、人とポケモンが共に暮らす街なんだ。これ以上はジムリーダーとして君を守れなくなる。頼む、落ち着いてくれ…わかってくれるね、」


やがてそれは小さくなり、迷子の子供がすすり泣くようなか細い声を残して、オレを含めた多くの人間たちが見守る中で、傷だらけの竜はようやく静止姿勢をとった。





***





エンジンシティの中央付近に位置する大病院は、見張り塔跡地の火事騒ぎで被害を被ったトレーナー達がまとめて放り込まれていた。たいしたバトルもしていないオレは腹部強打による湿布の診断のみで診察室から追い出され、さっさとフリーの身となった。

カブさんは街の責任者としてトレーナーの検挙と被害地区の隔離等々の残処理に追われて、しばらくはスマホロトム越しの顔合わせになるだろう。怪我の無かったリョウタは既にドラメシヤと共にナックルジムに戻り、幼体ポケモンの検診手配と遺跡の被害リスト、今回の事件の報告書を先行して進めている。相変わらず行動が早い。

はかすり傷と軽い脳震盪のみだったが、大事を取って二日間の検査入院となった。事件収束後間もなく目を覚ました彼女は大きな目に涙をたくさん溜めて、病室を訪問したオレに謝り倒してきた。まずはドラメシヤを無事全匹回収できたことを伝え、遅れてやって来たダンデを彼女に引き合わせる。

ワイルドエリアへの出発時にこちらから連絡はしていたが、事故直後にダンデがリザードンに乗って現場確認をしに来たのは多少驚いた。まだドラメシヤ不法厳選の当人は治療中のため事情聴取はできていないが、各ジムの強固な包囲網が、トレーナーに短慮な行動を引き起こさせたのだとしたら。重傷者は少ないものの一般人含む負傷者を複数出した結果に対して、現場担当のオレ達同様に責任を感じているのだろう。

人慣れしていない相手を怯えさせないよう若干の距離を保ったダンデは、寝台から身を起こしたに向けて、仰々しく胸に手を当てた挨拶の仕草をとる。

君。会うのは初めましてだな、リーグ委員長のダンデだ。名目上キバナ達をまとめる立場にある。ドラメシヤ達の件に関して、君の話を聞いたキバナから要請を受けて前々から調査していた。トレーナーの目星がついていたのにも関わらず君を巻き込んでしまったのは、ひとえにオレの不徳の致すところだ。まずは謝罪させてほしい」

「ダンデ、さん。こちらこそご迷惑をおかけしました。ドラパルトたちを助けて頂いてありがとうございます。…あの、彼女は、」

「君のドラパルトは今ポケモンセンターで治療を受けている。大きな傷はないから、まもなく戻されるだろう。安心してくれていい。…、聞くところによると、君はドラパルトの背に乗って応戦しようとしたらしいな。心配なのはわかるが君の体も、」

「ダンデよ、それに関しては後にしちゃくれないか、オレからも言っておくから。…今は休ませてやりたい」

「キバナ、私はもう大丈夫だから、」

「軽傷とはいえ頭打ってるんだ、お喋りは程々にして寝ておきな」

「…そうだな。すまないキバナ、君。今日は休息日だ、静かにゆっくり過ごそう。あらためて後日リーグより謝罪と、それからドラメシヤとドラパルトを今日まで守ってくれた礼を言わせて頂く」

「ありがとう、ございます」

「話し中に邪魔しますが、妖精さんへドラゴンの届けものです」


会話に入ろうとした口のままで何故ここに、と唱えたオレの疑問は華麗に無視され、もう一人の来訪者が遠慮なく開け放した病室の扉に姿勢悪くもたれかかる。も見知らぬ人間が増えたことに、動揺はせずとも目を瞬かせている。


「オレはキバナからの入電でシュートから急行したが、君もか?ネズ」

「エンジンシティはメインストリートでライブをしていたら、とんだヤジが入りましたのでね。おかげで人使いの荒いここのジムリーダーに使い倒されています。…あなたがですか?おれはネズ、こちらのキバナを説教しに来た通りすがりの男です」

「え、オレ?」

「まずは、あなたの相棒を。ドラパルト」


廊下に向かって手招きをしたネズの視線の先から、背中を丸めたドラパルトがゆっくり姿を現す。気落ちの表れか体色が薄くなっているが、と顔を合わせるや否や広げられた両手の中に一目散に飛び込んでいった。あやす指先に撫で声をあげ、頭の鋭角をすり抜けさせてまで彼女の胸に擦り寄っている姿は、いくら成体といえどもパートナーと離れた心細さがありありと伝わってくる。


「…オレなんでネズに怒られるの?この前の飲みでなんかしたっけ」

「しばらく対面では会えないから代わりに怒ってくれと、カブさんが。…とんだ曲芸行為をしたのは覚えていますね?あんなに街の近くで、ジムリーダーともあろうものが」

「あー…」


フライゴンを一度引っ込めてわざと落ちたアレ。久しぶりのそのテクニックを実行したら若干バランスを崩して冷や汗かきそうにはなったが、そういえばあまり推奨されることではなかったと今更ながらに続きの汗が背中に伝う。


「それが最善の行動だったのは皆分かっています。街人への説明もSNSの弁明も、エンジンジムが担当するそうです。だからおまえが覚悟するのは、空路交通法へのちょっとした反抗に対する説教です」

「…空を飛ぶのに法律があるんですか?」

「そうです、。ポケモンの飛行ライドには、一定以上の活動域を持つトレーナーに対しては、相応の免許が必要になります。あなたのようにワイルドエリアをちょっと散歩するだけならいりませんがね。ジムリーダーは救援活動などもあるので、一般人よりも危険なことが許される。それでもこのキバナがやったのは、墜落もありうる危険行為として自粛要請が出ている曲芸です」

「危険行為、そんな…!彼は私を助けようとして、」

「あー、、大丈夫、ちゃんとやれば滅多に怪我しないから。ホラ、昔はみんな普通にやってたし?」

「…その言い草、おまえ前からやってやがるな?」

「どうだったかな~」

「妖精さんの前で嘘つくんですか?」

「ハイ。…ごくたまに」


畳みかけられて小さくなるオレの横でダンデが苦笑している。おい待て、お前も確実にやってるだろ。ポケモンに関することならなんでも貪欲に試すコイツなら絶対にやる。今度酒の席でカマかけてやろうか。


君、そんなに気にする事じゃあない。要請であって禁止ではないし、なにより人命救助という最重要の目的でなされたことだ。勿論オレからもフォローする。何、少しばかり年配の方からの小言が出るだけさ」

「それなら良いんですが。…キバナ、私の為にありがとう。でももう危険なことはやめてほしい」


のためなら、とよっぽどか言いたいが、そうすると説教の時間が倍になって返ってきそうなので手で応えるだけで黙っておく。


「そんなんだから飛行免許試験の難易度が毎回上がるんじゃないですか?今年度はけっこうな高難易度と聞いてますよ、マサルが泣いてました」

「そうなのか。今受けたらオレはもう落ちるかもしれないな」

「ハイハイもう出てろ、お前ら。を寝かせる」



管巻き始めた奴らを部屋の外に出し、詳細の報告は追って、と目配せで伝えて解散してから静かに病室に戻る。白一色の無機質な空間にとドラパルトが小さく丸まっているのは、違和感しか感じない。

無言。ゆらゆらと揺れるドラパルトの尻尾だけが、目の前の光景が静止画でないことを現している。


「…、怖かったな」


返事は帰ってこないが、ひくりと震わせた肩が何よりの返答だろう。塔を追われて、唯一の家族と言ってもいいドラパルトも他人にゲットされそうになって、彼女の怯えと心労はいかほどか。全員無事で良かったとはいえ、初動は遅れ、満足のいく結果で守りきれたわけでは勿論ない。

寝台横の椅子に腰を下ろして視線を合わせれば、ほつ、との歪んだ目から涙が落ち、慌てた様子で鼻先が下に向けられる。なんでもないとばかりに布団を整えなおして、それでも上半身の震えは止まっていない。


、オレも見てないから、泣いちゃいな」

「だって、頑張ったのは…痛かったのはドラパルトで、私じゃない、から」

「ドラパルトの感情はドラパルトのもの、のものはのものだ。…パートナーに共感するのは良いことだが、無理に自分を合わせるのは感心しない」


自分も部屋から退出した方が良いかとも考えたが、ほおっておきたくない欲求の方が勝つ。の膝に蹲るドラパルトも涙を促すように、彼女の手の甲に頬ずりをしながら見上げている。それでも押し殺した嗚咽をさらに自分の服の袖で押さえつけて、小さく身を震えさせるのみ。


ごめんなさい、ごめんなさい、とオレなのか、ドラパルトに向けて言っているのか、か細い声が謝罪を繰り返す。あやまらなくていい、そのままでいい、との思いを込めての肩を抱き寄せる。華奢な体格が簡単に自分の腕に収まるのを今更理解して、ああ、守らなければ、と漠然ながら確りと自覚する。ジムリーダーとして万人を守る責務以上の、心からの願い。真二つに分かれた塔の光景が一瞬彼女に重なり、余計な仮定を考えるなと自分の中の恐怖心を叱咤する。


『…〇〇、〇〇〇〇』

「…、え、」


そう遠くない過去、ナックルの広場で聞いたものと同じ言葉。家の辞書で調べても意味を見つけられず、あれ以来オレの脳内に小さくこびりついている。


「…なんでも、ないです。ごめんなさいキバナ、もうすこしだけ、このまま…」


涙は静かに決壊して、すべらかな頬を幾筋も落下しはじめる。
ドラパルトもオレも視線を合わせないまま、しばらく動かないまま互いの体温だけを意識的に感じていた。





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ジェットコースターもかくやのバトルでボール以外の内容はあんまり見れていない
ドラパルトにしがみつきっぱなしだったのをあとでいろんな人におこられた

▼キバナ
最後の曲芸はポケモンアルセウスやった人にはおなじみ落下ダメージ防止のライドテクニック(墜落直前に再騎乗する)
過去にやんちゃして何度かやったことがある

▼カブ
一連の対応には感謝しているが曲芸で説教が1時間増えた
監視カメラにバッチリ映っているので頭がいたい

 

 
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